しんじようがしんじまいが
Posted on 2011.07.22 Fri 23:58:05 edit

GRD(て) トラックバック企画「涼」に参加 写真と文章はカンケーないです。
信じようが信じまいが。
ある夜、僕はオートバイに寝袋を括り付けて走っていた。(その頃ホンダのGB250に乗っていた。)
なんかもう、目的地もなくただ走り続けるロングツーリングで、知らない土地の空気を感じたくって。
今から考えると、もう、むちゃくちゃなルートだったなぁ、と。
どこかの道。
道の右側は山で、左側のガードレールの向こうは何十メートルかの崖で海。
海はどこまでもどこまでも黒く、ずーっと遠くに見えるかすかな点は漁船の灯り。
しばらく走っているんだけれど道に灯はなくって
ただ、自分のヘッドライトの灯りとエンジンの音とヘルメットに響く風きり音だけ。

たまに地図を見る為にバイクを停める。
バイクから降りてエンジンを切ると、耳鳴りがしてしまうくらいの静けさ。
それでも少しすると、遠くからかすかに波の音が聞こえるのがわかる。
懐中電灯で地図を照らすと、あまりに進んでいない走行距離にがっくし。
「いったい今夜寝る場所は何処になるのだろうか?」の自由感すら楽しむ余裕もなくて
ただただ疲れきっている。
そして懐中電灯の明かりに集まってきた虫を手で払う。
●
またオートバイに跨って走り出す。
道はとても狭いから右側の山側から突き出た木の葉が時折バックミラーをかすめる。
僕は「このガードレールとその反射板がなかったら海に落ちてしまうかもな」
とさっきから考えながら走っている。
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ある瞬間、ヘッドライトの灯かりの中に 『浴衣姿の女性』 が現われる。
ガードレールの遠く下の海を眺めるように立っている。
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僕は減速するでもなくその脇を通りすぎる。
走り過ぎ去りたかったからだ。
人里離れたこの暗い山中に人が居る事の意外さ、はもちろんなんだけれど、
そう言った理屈とか、全部抜きにして、直感的に、僕は「変だ」と感じた。
怖かった。
それでもそんな感覚を拭い去りたくて、走りながら
ちょっと行った先に車が置いてあることを願いながら道脇を目で追う。
思った通り車はなかった。
わき道もなかった。

何年か後に、信州のキャンプ場で出会った年上のライダーからその場所に関する悪い噂を聞いた。
「やっぱりね。」と彼は言った。
この話しにオチはなく、それだけの話し。
ただ、信じようが信じまいが「幽霊を見たことがあるか?」と聞かれたら
僕は「ある。」と答える事にしている。
そして何年か後にとっても変な体験をしたんだけど、それはまた今度。
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